1200MHz用UHF42chトラップの製作 (2003/6/27)

1200MHz帯のメインチャンネルである1295MHzにテレビの音声らしいものが入っていると、YAMA MLで問いかけると、多くの方からそれは神奈川テレビ(TVK)42chの映像周波数と音声周波数の和による混信ではないかと言うご指摘をいただきました。しばらくの間、放置していたのですが、たまにCQを出した後に「他の人にも呼ばれていましたよ」などと言われて、影響が甚大であることを再認識しました。

まず、現状把握として神奈川テレビの送信所について調べました。

送信所 横浜市鶴見区 三ッ池公園
チャンネル 42ch
周波数 映像周波数 645.25MHz/音声周波数:649.75MHz
出力 映像 10kW/音声 2.5kW
実効輻射電力  映像 125kW/音声 31kW

確かに映像周波数と音声周波数を足し合わせると1295.00MHzになります。

我が家にはUHFのアンテナが上がっておらず、従ってTVKも視聴していないために、これほど近くにこんな強力な送信所があると認識していませんでした。位置関係を地図で把握したところ、当局からわずか12kmしかありませんでした。

次に、具体的にどのくらいの信号強度で入っているかを調べました。TVKの放送らしい変調が1295MHzで一番強く聞こえます。ビーム方向によっては何とS9+80dBまで針が振っており、アンテナの向きによって大きく信号強度が変わりましたが、いつも向けている新宿方向ではS9+20dBとなっており、これではCQを聞き逃すのも無理はありません。最も信号強度の高い220度方向(直接波の方向ではなく反射波のようです)に向けて1290MHzから1300MHzまでスイープすると、激しく信号強度が上下しながら、そこら中で観測されました。

そこで、ちょっとプリアンプの電源を落としてみました。するとどうでしょうか?それまで、メータを振り切っていた放送らしい変調がぴたりと止まります。どの周波数にしても聞こえてきません。これで、プリアンプに強力に入る放送波の混変調が1295MHzに飛び込んできていると、ほぼ断定できました。

ここまで、状況把握をしたら、対策を打たなければなりません。YAMA MLで、λ/4トラップを使ったUHF波の除去法を教えていただきました。問題となるのは650MHz付近の放送波で、その信号をプリアンプに入る前に出来るだけ減衰させる必要があります。2次の混変調積が妨害を与えているとすると、入力信号を10dB下げれば2倍の20dB下がるはずです。そこで、現在のS9+80dBをS9まで下げるのを目標とすると、650MHz帯での減衰量の目標値は40dBとなりました。ちょっと同軸ケーブルを使ったトラップで実現するには、目標が高すぎるようですが、十分に設計する時間もなく同軸トラップを採用することにしました。

さて、実際に作ることにしましたが、6m&Downコンテストまであと1週間しかなく、部材を手配する暇がありません。以前トラブルを出して降ろしてきた5D-SFAのコネクタ付のケーブルが目に止まりました。梅雨の中休みで明日しか取り付け作業が出来そうになかったので、迷わずそのケーブルに手を伸ばしました。適当な長さに切って半田付けでT字状にしました。λ/4トラップの長さは、ケーブルの波長短縮率にばらつきがありますので、一律には決めることが出来ません。まして、SFAケーブルのような低損失タイプのケーブルは一般に短縮率が小さい傾向が出ます。一応、短すぎない長さということで、110mmほどの長さを残してトラップとしました。

調整は、ネットワークアナライザを見ながら行いました。3回カットして約90mmほど残ったところで、ほぼ思ったところにノッチ周波数がきました。欲を言えば、1mmほど切り過ぎたかも知れませんが切ったものを戻すことは出来ません。

写真ではちょっと見難いかも知れませんが、650MHzでの減衰量が23.5dBとなりました。ヌル点での減衰量は37dBほどなので、ぴったり周波数を合わせていれば、当初の目標スペックを限りなく満たすことが出来たかもしれません。一方1260MHzから1300MHzにおける挿入損失は0.26dBでVSWRは1.05と実用上全く問題のない範囲であることが分かります。出来上がってしまったものは、受け入れるしかありません。自己融着テープとビニルテープで厳重にテーピングします。

λ/4トラップの長さは約90mmとなりました。      網線の下はビニルテープで絶縁しました。

自己融着テープとビニルテープで2重、3重にテーピングしました。

梅雨の中休みに間に合ったようです。早めに会社から戻って、取り付け作業を行いました。アンテナ直下にあるのはマキ電機製のGTR-1200Tです。アンテナから来ている10D-2Vをはずして、N-JJを介してトラップケーブルを挿入しました。ここも、防水のために自己融着テープとビニルテープで2重にテーピングしました。トラップのケーブルが長すぎて取りまわしに苦労しましたが、何とか取り付けを完了しました。写真は夕方になって色を失ってしまいました。

ケーブルを繋いだところ                  トラップに水が溜まらないように先端を下向きに

さて、いよいよ効果の確認です。事前に取得したデータと対策後のデータを重ね合わせてみました。一つは1295MHzでアンテナを回した時のSメータの読みから求めた信号強度の比較です。もう一つは1295MHzでアンテナを最も妨害波の高い方向に固定した状態で、周波数をスキャンしたときの信号強度の比較です。

対策前はS9に相当する27dBを越える方向がほとんどでしたが、対策後は135度方向でS9に達するだけで、その他ではS3以下となりました。改善度をはっきり計算することは出来ませんが、650MHzでのトラップによる減衰量のほぼ倍の40dBとかなりの一致を見ています。

周波数をスイープしたときは、対策前が色々な周波数で突発的に出ていたのに比べ、対策後は周波数の上昇に従いだんだんSが下がっていきました。この傾きがトラップの周波数ずれに似ているような気がします。きっとノッチ周波数をぴったりと合わせこめば、1295MHz付近での効果が出たのではないかと後悔されます。しかし、BS用のアンプから発生する再輻射による妨害と言うことも考えられます。いずれにせよ、前のグラフでも示したように、135度以外のアンテナ方向ではS3程度であり、実用的にはどの周波数帯でも問題なくなりました。

対策後、早速1200MHzで交信していた方を呼んでQSOしました。妨害波のない1200MHzの何と居心地の良いものか、再認識しました。これで、来週に迫った6m&Downでの1200MHzに期待できそうです。

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