ルーフタワーの建て方(2003.1.11)

ルーフタワーの建て方は人それぞれ色々なやり方があると思いますが、地面から自立型タワーを建てることが出来ない方の参考となればと思い、自分流の建て方を以下に紹介します。(もちろん、このやり方を真似したからと言って、台風でマストが折れたりルーフタワーごと倒れるという事態が起こる可能性はあります。その事を十分認識して、各自の責任で工事を行ってください。)

アンテナ

現在のルールタワーの状態を以下の写真に示します。このルールタワーには3.5MHzから10.1GHzまでのアンテナが9本取り付けられています。取り付けられているアンテナを紹介すると、

18mH: 144MHz 10エレ八木 (144WH10 マスプロ)
     430MHz 15エレ八木 (435WH15 マスプロ)
     1200MHz 18エレ八木 (X1218 クリエートデザイン)
17.5mH: 2400MHz 29エレループ (HGL2429 マキ電機)
17mH: 5600MHz 45cm オフセットディッシュ (マキ電機)
16mH: 50MHz 7エレ八木 (CL6DXX クリエートデザイン)
     10.1GHz 45cm オフセットディッシュ (市販品組み合わせ)
14mH: 14−21−28MHz 4エレトライバンダ (3X4B ミニマルチ)
13mH: 3.5−7MHz インバーテッドV (W-735 ダイアモンド)

となります。

さて、そろそろ本題のルーフタワーの建て方に話を移したいと思います。

ルーフタワー

肝心のルーフタワーには、HS-6000W (実行長: 6m マルドル)ステージ付きを使用しています。1993年頃から使っていますから、そろそろ10年になろうとしています。(製品の説明は約10年前に購入したときのものですから、現在では仕様が変更となっている可能性があります。)
特徴としては、ほぼ全てアルミ製で自重が約25kgと軽いにも関わらず、トラスが全段に入っていたり十分な厚さの部材を使用していて、使用上十分な強度を得ています。ボルトとナットもステンレス製なので、ねじ締め部についてのさびの問題は殆どありません。ただ、ステー金具と4本の足の先端の金具だけが鉄製でしたので、その部分はかなりさびが出ています。
以前使用していた全長9mのアルミ製のルーフタワーが、台風のときに脚の部分とタワーの部分をつなぐ金具の構造が悪く、その部分から大きく傾いたことがありました。このHS-6000Wにはそのような接合部分の強度不足もなく、今日まで至っています。

ベース

建物はツーバイフォー工法で建てられた木造住宅です。屋根はスレートになっています。そのため、横方向の段差が少ないので、厚さ5mm、幅50mm、長さ1.5mの鉄板を2枚、ベースとして脚の下に敷いています。これにより、ルーフタワーの負荷が点ではなく、線状になるために一部のスレートが割れると言った問題を起こさずにいます。ただ一応、防錆処理をしてから塗装したのですが、10年たってさびが出始めています。まだ、強度が下がるほど腐食しているわけではないので、もう少し様子見かと思っています。

 

ステーアンカー

ルーフタワーが安定して建つための最も大切なところだと思います。従来はヒートンなどを打ち込んだりしていたのですが、それでは限界があることは明らかでした。また、通常の木造軸組工法(従来工法)と違いツーバイフォー工法では、垂木が屋根の先端まで通っていないので、ヒートンを効果的に打つ場所さえもありません。そこで、近所の鉄工所に1辺10cm、長さ40cm、厚さ5mmのLアングルに木ねじ固定用の穴10個と、ワイヤー用の穴3個をあけた金具を作ってもらいました。それを屋根の先端に取り付けた状態が次の写真です。

 

写真では全く見えませんが、このLアングルは雨樋にちょうど隠れているところで、10本の長さ50mmの木ねじによって屋根に取り付けられています。残念ながら、これらの木ねじが全て十分強度のある部分に、ねじ止めされているとは言い難い状況です。あるものは、表面の化粧板と、耐熱タイルにしかとまっていないものもあります。ただ、本数が多いためでしょうか、十分な強度を保っている様で、未だに取り付け面に隙間など開くような状況は認められません。
ただ、問題は屋根から流れ落ちてきた雨水がこのLアングルの上に落ちるために、かなりの量がLアングルを伝って軒下の方に回ってくることです。それを防止する目的で、小さなアルミのLアングルを接着して水の流れを樋の方向だけに持って行こうとしたのですが、まだ完全ではない様です。別のアルミアングルの下には水が流れた後が黒いすじとなって残ってしまいました。
この工事は、この建物が建ってからしばらくしてから行ったのですが、南面のバルコニーがあるところからアクセスできるところは良かったのですが、北面は下からはしごをかけても上から身を乗り出しても出来るような状況ではなく、結局工事用の足場を、建設業者の方に取り付けていただくことになってしまいました。(この費用だけで10万円近くしてしまいましたので、建物を建設中に出来れば樋が入る前に工事するか、していただくのが良かったと反省しました。

ステー

ステーワイヤーは開局当初は鉄のワイヤーを使用していましたが、一時期デベグラス・ロープを使い、その後デベグラス・ワイヤー(グラス・ファイバー工研)を使うようになりました。使っていて良いなと思う点は次の通りです。

1. 伸びない
鉄のワイヤーを使っているときは、結構頻繁にテンションを維持するために長さを調整する必要がありましたが、デベグラス・ワイヤーではその必要が殆どありません。
2. 電波が乗らない
インバーテッドVなどをルーフタワーの途中から出したりしていますが、電波が乗らないので、変な干渉が起きません。
3. 加工が楽
ニッパーやはさみで簡単に切れてしまいます。ステーに使うためには何本も加工する必要があるので、簡単に切れるのはうれしいです。鉄のワイヤーのときは切るのも大変でしたが、端末からほどけない様に端末処理をするのがえらく大変でした。
4. 軽い
5mmのもので100mの重さが3.2kgしかありません。加工や施工が楽ですし、ステーとして張った時に、自重で下がりにくいので見栄えも良いです。
5. 強い
現在使用している5mmのものでも引張強度は620kg、ルーフタワーで使うのなら十分でしょう。
6. 耐久性
カタログには10年以上と詠っていますが、偽りはない様です。とは言っても、表面の退色が進んできたので、そろそろ交換時かと思います。

ただ、注意すべき点は加工が楽の裏返しで、外傷には弱そうです。擦れたり、何かぶつかったりしない様に十分な注意が必要だと思います。幸いにも、今までデベグラス・ワイヤーが切れたことは一度もありません。

クリップで止める時は左下の写真の様に2箇所で止めた上に1回結んで置きます。ワイヤーコース(シンプル)は、必ず使います。屋根に近い場合、風でルーフタワーがゆれたりしたときでも、デベグラス・ワイヤーがどこにも擦れない様に注意します。右下の写真はターンバックル付近のステーの取りまわしですが、万が一ターンバックルのところでステーが外れてしまうことを想定して、上下のステーを繋いでおくと安全です。本来なら、もう少したるみを少なくした方が良いですし、きっちりと長さが分かっているのであれば、1本のデベグラス・ワイヤーの途中にターンバックルが入っているような構造にした方が良いでしょう。

 

ステーは、最上部と脚の上側の2段ステーとしています。タワーの中断で留めて3段ステーとすることを考えたのですが、知り合いの建築の専門家は余り効果が無いと言うアドバイスだったので、止めてしまいました。

南面だけですが、2002年の台風急接近の最中、補強用で仮設置したステーが弱々しく張られています。ワイヤークリップやターンバックルの予備が殆ど無かったために、余りにいいかげんで効果が無さそうですが、やり直しをする前に冬になってしまいました。暖かくなったら本格的にステーの入れ替えに着手しようと思っています。

同軸ケーブル

同軸ケーブルは上から下へと敷設します。従って、アンテナに接続する辺りではきっちりした長さになって余らないのが普通です。しかし、何かの拍子に引っ張られてしまうことを考慮して、アンテナのコネクタのところで、小さく1回転するくらいの余裕を持たせる必要があります。

また、ルーフタワーのトップで回転するところは、±180度回ったときにどこにも巻き込まれたり擦れたりしないような、ちょうど良い長さだけたるませて、マスト側とルーフタワー側をきちんとビニールテープなどで留める必要があります。この措置をいいかげんにやると、いつかは必ずケーブルがベアリングのところに巻き込まれて、ケーブルをいためることになるので注意が必要です。回したときにかなりの力がかかりますので、ビニルテープはしっかりと二重、三重に巻くのがポイントです。
と言いながら、私のケーブルがルーフタワーやステーに接触してビニルテープが痛んでいたりするのは、ご愛嬌と言うことでお許しください。

細くて低損失が売りの発泡タイプの同軸ケーブル(FBタイプやSFAタイプ)のケーブルは、外皮導体にアルミテープや銅テープが用いられています。これらのケーブルはある程度まげて敷設することは出来ますが、曲げたり伸ばしたりすると、テープに亀裂が入って本来の性能を維持することが出来なくなります。すなわち、ルーフタワーのトップで回転するたびに曲げられる部分には使えないと言うことです。私の場合は、ルーフタワーの途中までは低損失の発泡タイプの同軸ケーブルを使っていますが、そこから先は10D-2Vや10D-2Wに繋ぎ替えてアンテナまで持って行っています。以前手持ちの都合で、5D-SFAのままケーブルを上まで繋いだところ、3ヶ月ほどで調子がおかしくなり、交換したと言う経験もしています。その不具合を起こしたケーブルを部屋で測定して見ると、ある特定の角度に曲げたときだけ損失が大きくなると言う現象が発生しました。この例は5.6GHzで経験したのですが、周波数が高いほど顕著に発生しますので、注意が必要です。

同軸コネクタを接続する場合、防水のために自己融着テープを使用します。最近はエフコテープ2号(古河電工)を使用していますが、同様の製品であれば特に問題ないでしょう。ただ、適度に引っ張って伸ばすことと、必ず1/3は重なる様に巻く必要があります。また、雨水がケーブルを伝って垂れてくるのを考えると、巻き方も下から上に向かって巻いていく方が良いでしょう。製品によっては対候性を高める目的で上からビニルテープを巻いたりします。

 

ローテータ

最初はこれほどのアンテナを載せる積もりは全くなかったので、ローテータにはRC5-3(クリエートデザイン)を使用しています。ちょっとした計算をしただけで、負荷オーバしていることが分かりますが、良く耐えてくれています。とは言っても、以前50MHzの7エレ(CL6DXX)スタック時代にギアが破損して回転しなくなったことがあります。その時は、それほど大きな台風ではなかったのですが、なんかの拍子なのでしょうか、思いがけず壊れてしまいました。それ以外でももっと強い風に吹かれていますが、壊れたのは1回だけでした。今から購入するのであれば、少なくとも一クラス上のRC5A-3にしますね。
このローテータは音が静かなのも特徴です。以前、102LB(江本)を使っていたのですが、それまでとは比べ物にならないくらい静かになりました。ルーフタワーの場合、ローテータの音が屋根を通じて部屋まで伝わってきますし、近所にも広がりやすいので、気にしたのですが全く問題ないレベルです。

コネクタ部分から水が浸入しないように充分テーピングする必要があります。私の場合は、自己融着テープで巻いた上に、ビニルテープでさらに巻きました。以前、台風の大雨が降った後でローテータが回らなくなる事故があり、調べたらコネクタ部分まで水が入り込んでいました。テーピング強化後はそのようなことは起きませんでした。

マストベアリング

どのような使い方が本当に正しいのかを検証したことは無いのですが、以前どこかで、マストベアリングはマストにしっかりと留めてはならないと言うのを見て、私もベアリングのボルトはマストと隙間が開く様にしてあります。従って、マストベアリングはアンテナが揺られたときだけ、マストを支える様になっています。すなわち、マストベアリングを回そうとすると、アンテナが回らなくとも、ベアリングだけ回ってしまうのです。この留め方が良かったのか、ローテータを壊すのを最小限にしている様です。

マスト

私は直径60mm、厚さ3.2mm、長さ5.5mのガス管を使っています。ガス管にも材質の違いで何種類かあるようですが、今使っているものがどのような材質のものか分かりません。ただ、ルーフタワーより4m頭を出して、これだけのアンテナを載せても、今まで事故がなかったことを考えると、結構良い材質のものが入手できたのかもしれません。
何段かステップをつけて、さらにアンテナまで踏み台にしながらトップまで上がっていくことがたまにありますが、体重??kgの体重を受けても余りゆらゆらすることはありません。以前、直径50mmの足場鋼管によじ登ったときの恐怖とは比べ物になりません。
強度から見れば、材質が分かってさらに2重パイプにしてあるものもありますが、価格が段違いなので、予算的に厳しい人はガス管をお勧めします。(出来れば、材質指定できれば安心ですが、そこまで出来るのでしょうか。)

屋根

建物を建てるときから、ルーフタワーを載せることにしていましたので、屋根の強度が心配でした。私の家はツーバイフォー工法で建てられているのですが、建物の設計がある程度進んだ段階で設計士に、想定されるルーフタワーの図面とアンテナの受風面積等の資料を渡して検討していただきました。その結果、「この程度の荷重であれば問題無いでしょう」とのお墨付きをもらいました。(どの程度問題が無いのかは聞きませんでしたが。)ちょうどルールタワーの真下辺りに屋根を支える構造体も入るのも、幸いした様です。

築10年が過ぎて、屋根にも色々な変化が起きてきました。特に一番困ったのは、苔が生えたことです。北側の斜面がだんだん滑りやすくなってきたなと思ったら、ほぼ一面に苔が生えていることが分かりました。晴天が続いていれば何とか歩けますが、雨など降ってこようものならつるつるとなって、ステーにつかまっていなければ立ってもいられないほど滑ります。今度機会を見て、苔を撃退する薬剤を撒いて、デッキブラシで一掃しようと計画中です。

 

全ての人が実行できるわけではありませんが、屋根へのアクセス用に建物を新築するときに専用の天窓を付けました。この天窓は、屋根裏部屋に取り付けられており、屋根へ上がるときは屋根裏部屋から直接出ることが出来ます。
もちろん、大の大人が楽々通れる程度の大きさが必要なので、最初建物の設計士に天窓を付けてと頼んだら、採光用の小さな天窓を付けるような設計となって、そのままでは人の出入りが出来ませんでした。そして、天窓を希望どおりの大きさに変更してもらったら、今度は屋根裏部屋に上がる折りたたみ階段の上につけてあって、屋根に上がる時の足場が無い状態でした。設計変更2回目で、やっと思うような天窓になったのですが、このような要求に応えて付ける天窓は少ないかもしれません。
以前は1階の屋根に脚立を立てて、そこから上がっていたのですが、脚立が不安定でいつか落ちるのではないかと言う不安がありました。木造住宅であれば、屋根裏部屋を付けることはごく当たり前でしょうから、それにちょっと天窓を追加するだけで、屋根への快適なアクセスが出来るようになります。我が家の自慢の一つと言っていいかもしれません。

別のアングルから見たルーフタワーの様子です。我ながら一杯載せたものだと感心してしまいます。近いうちに少しアンテナを整理して、大風が吹いても少しは安心していられるような状況に近づけたいと思います。

最後に繰り返しますが、ルーフタワーやアンテナの安全性は各個人の責任に委ねられます。私も少なからぬ金額のアンテナ保険に毎年加入して、最後の責任が全とう出来るような準備だけはしてあります。

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