釣り竿RDPの製作(2003/8/24)

製作までの検討段階

現在の我が家のローバンドアンテナは、狭い敷地の関係では3.5/7MHzのインバーテッドVは給電点の地上高が13m、先端を折り曲げて何とか展開している状況です。竹ざおで両端の高さを稼いでいますが、それでも両端の地上高は6.5mしかありません。そのためか、打ち上げ角が高く、国内QSOには最適ですが、海外とのQSOは思うように出来ません。また、電圧腹の地上高が低い関係でTVIやテレフォンIが入りやすく、ベアフット100Wでもちょっと気になる状態です。

そこで、給電点とエレメント両端の地上高を出来るだけ上げて、打ち上げ角を下げると共に、インターフェアを出しにくいアンテナを製作することを考えました。運用バンドは3.5MHzと7MHzをメインに考え、10MHzなどのWARCバンドが出来れば最高です。もちろん、費用も手間もかからないのがベストなので、手持ち材料やコストの安い材料を使うことを目指しました。

ローバンド向きのアンテナと言えば、まずは釣竿を使ったアンテナが思い浮かびます。JH1GNU 小林 茂著 「釣竿アンテナ製作ノート」 (CQ出版社)を読み直しました。ここでは釣竿アンテナで最高の性能を得るために、基本的にはシングルバンドのアンテナをマッチング切替えによるマルチバンド化を行うと言う方針のため、初心者がすぐにマルチバンドアンテナを作れるほど甘いものではないと分かりました。

次に、CQ誌の「快適無線研究所」の担当でもあるJJ1VKL 原岡さんのホームページで目的に合いそうなアンテナを探しました。(http://www02.so-net.ne.jp/~jj1vkl/)
ありました。「まな板で作る釣り竿のV型マウント」がほぼぴったりです。早速、ロビー(電子掲示板)で色々なノウハウを頂いて、実際の製作に移ることにしました。

実際の製作

釣竿の入手
アパマンほどエレメント長が厳しくないので、敷地いっぱいの片側7m程度まで延長することにより、ローバンドの効率を高めることを目指します。使用した釣竿は、グラスファイバ製の7.2mの釣竿で、根元の直径が約30mmのものです。知り合いから安く譲っていただきました。

竹光化
グラスファイバ製の釣竿は導電性がないので、エレメントとなるアルミ線やビニル線を沿わせるだけでも問題ないのですが、強度の向上と紫外線による劣化の防止効果があると言われるアルミテープ貼りによる竹光化作業を行いました。竹光にするための作業は、前出の「釣竿アンテナ製作ノート」に詳しく書かれていますので、その通りに行いました。手持ちのアルミテープの長さが足りずに、あっという間になくなってしまいました。追加は100円ショップで購入しましたが、厚さが若干薄いことと、一巻の長さが短いこと以外は同じように使えました。ちょっとした買い足しならば、100円ショップのものでも良さそうです。

エレメント線の取り付け
実際のエレメントには、軽量化の点からφ1.5mmのアルミ線を使用しました。1本だけだと断線した時に即座に機能しなくなりますので、釣竿の対称となる位置に1本ずつ添わせてアルミテープで固定した上で、約30cm間隔にアルミ線で縛り上げました。釣竿の長さが伸ばした状態で微妙に違うので、アルミ線の長さを伸ばして同じ長さになるように調整しました。根元の方のエレメントは、釣竿から50cmほど余らせて、給電しやすいようにしました。

まな板の加工と釣竿の取り付け
エレメント取り付けには、まな板を使用しました。そのまな板は100円ショップで、なんと1枚当り100円で購入できました。大きさは、40cm×23cmほどで、厚さが7mmです。エレメントが長いし、マストの途中に取り付ける関係上、原岡さんと同じ加工方法は出来ませんでした。まな板2枚を使って1枚に釣竿1本を取り付けるようにしました。加工図も組立図もないのですが、下の写真のように、釣竿とまな板との固定はタイラップ8本ずつで行っています。まな板同士は4本の独立したボルトでそれぞれナットではさみつけるようにして保持されています。向こう側のまな板だけがUボルトによってマストに固定されているわけです。

平行フィーダの取り付け
MDRFは平行フィーダで給電するのが特徴となっています。今時、入手の難しい平行フィーダ、それも出来れば低損失タイプのものが入手したいところです。TV用の300Ωの平行フィーダでも使えないわけでもないとは聞いていましたが、探していたところ、これも知り合いから9mほど分けていただきました。
このフィーダをまず、釣竿のエレメントに圧着端子を介して接続します。平行フィーダのまま、マストやルーフタワーに沿って下のほうに伸ばしていきます。原岡さんと同じような園芸用のプラスチック網は、Do It店で簡単に見つかりました。私は、1cmメッシュのものを1m買って帰りました。そのプラスチック網を50cm×4cmほどにカットして、金属物から20cm以上離すように並行フィーダを固定していきます。50cmほどの間隔で固定していくと、形の崩れが少なくてすみました。回転部分も同軸の束にスペーサを少し短い間隔で保持していったところ、マストの回転が可能となりました。下の写真を参照してください。

アンテナチューナ
平行フィーダが9mしかなかったこと、マニュアルでチューニングを取るのが面倒であるとの理由から、アンテナチューナにはICOMのAH-4を使用することにしました。上のアンテナから下りてきた並行フィーダをフロートバラン(φ10×120コア 2本にφ1.25ビニル線10回巻き)を経由してAH-4に接続しました。AH-4から出てくる同軸ケーブルと制御ケーブルには、AH-4の近くにFT240-43コアを使用したソータバランを入れました。下の写真を参照してください。
このあたりは、原岡さんの記事と大分離れていますので、問題が出ているところかもしれません。

完成形と性能評価

下に完成した釣竿RDPの全景を示します。給電点の高さは16.5mほどになりました。釣竿は開き角はまな板の大きさで決まってしまいましたが、140度ほどに開いています。

使用感は次の通りです。
1.9MHz: AH-4は3.5MHzからの対応なので、チューンが取れることは期待していなかったのですが、何故かばっちりとSWRが下がります。しかし、それだけではありません。誰も聞こえていない1.910MHzでCQを何回か出したところ、0エリアから呼ばれるという、意外な結果となりました。今まで、東京都内から神奈川、埼玉くらいまでしか飛ばなかったのが嘘のようです。その後のKCJコンテストでは、1.9MHzを中心に運用し、71局30マルチと交信でき、6エリアから8エリアまでの国内各地と交信できました。
3.5MHz、7MHz: 給電点地上高13mのインバーテッドVと聞き比べをしたところ、国内局の場合、Sメータで3つほど振れが悪いです。おそらく、10dB程度感度が下がっているのでしょう。しかし、同じくらいノイズフロアも下がっているので、S/Nは余り変わったように思えません。ノイズレベルすれすれの局の聞き比べをすると違いが出てくると思います。
10MHz、18MHz: 今まで、WARCのアンテナを持っていませんでしたので、比較のしようがありませんが、国内外共に結構聞こえてきますし、呼べばそこそこ出来ます。
14MHz: 14m高の4エレトライバンダと聞き比べて、遜色ありません。Sメータだけ見ると、S 1つ分くらい多く振れていることもあります。利得のせいでしょうか、打ち上げ角のせいでしょうか?思わぬ誤算でした。もう少し多く評価を行いたいと考えています。
21MHz〜50MHz: AH-4でマッチングが取れることだけは確認しましたが、本格的に性能評価は行っていません。

まとめ
当初目標であった、打ち上げ角が低くてインターフェアの少ないアンテナと言うのが実現できたかどうかの判断は下せません。まだ、改善の余地もあるでしょうし、評価が完了したとも言えません。ただ、簡単に出来上がってしまったアンテナの割には、1.9MHzを始め予想以上の性能を得られたと思います。この後も、改善と評価を繰り返して性能向上を目指していきたいと思います。手軽に上げられる大きさと重量なので、移動向けにも良さそうに思われます。

無線設備のページに戻る

トップに戻る